« July 2010 | Main | November 2010 »

2010.08.16

アニメ「四畳半神話大系」

放送はとっくに終わってしまったのですが、ノイタミナのアニメ「四畳半神話大系」がもう、驚くほど良いアニメでした。

「四畳半神話大系」は森見登美彦さんの作品の中でもかなり地味な作品なので、森見登美彦さんが好きな故に制作発表時には「なぜ…」と思い。
中村佑介さんのキャラクター原案も、中村佑介さんの絵が好きな故に「それは動かせないのでは…」と思い。

うっすらと不安だけを感じて見始めたのですが、予想とまったく違う、というか「こんなアニメちょっと見たことない」系の斬新さでした。いや、話は地味なんですけど。


そもそも「四畳半神話大系」というのは、ただでさえダメになりがちな大学生の中でもずば抜けたダメさを発揮する「私」が、四畳半の借間をスタート地点としてキャンパスライフを開始するも、壊滅的なまでの惨状でバッドエンドを迎え、「あの時違う道を選んでいれば・・・」と思うたびにリセットされてイチからキャンパスライフをやり直す…という話で、それだけやり直せば一度くらい人も羨むような花道を歩んでもよさそうなものなのに、あらゆる道で微塵も輝かない、全編に渡って清々しいほど華々しくない物語なのです。

それが、アニメ第一話、開始5分で実写と合成したオープニングが流れたときにはもう、「これは絶対に面白い」と確信するほどの出来。
「『四畳半神話大系』アニメ化」と聞いて、だいたいの完成図を予想して見ている人のアゴを全部外してやろうとする、制作者のニヤニヤ顔が透けて見えるような小気味良さでした。


2話ではいきなり主人公がほぼ全裸で登場したのですが

200816_1

こんなにも大胆に脱いでいて、こんなにも差し障りのない雰囲気を漂わせる全裸ってのも鮮やかだと思いました。
ある意味「東のエデン」と真っ対照。


OP・EDの曲といい映像といい、同じことの繰り返しを飽きさせずに見せる作りといい、まったく美しくない日々だけを重ねたのになぜか感動の渦に巻き込まれる最終回といい、パーツのひとつひとつも全体の組み合わせのバランスも奇跡のような作品でしたが、特に主人公の「私」役の浅沼晋太郎さんの演技は素晴らしかったです。
普通なら台詞の多さに溺れそうなモノローグを、立て板に水で口上師のようにこなし、クライマックスの第10話では30分全てが浅沼さんの語りという物凄さ。

2話を越える壮絶な全裸を披露した最終話の裏ではUstreamで本人が出演し、「こんな長い時間全裸になったのは初めてだ。木村良平(「東のエデン」の滝沢朗役。知り合いらしい)にも言わないといけない」という麗しいコメントをつけておられました。

100816_2

もちろん、アニメにおいて何故か萌えキャラ扱いされる羽目になった小津、坂本真綾さんが「ぎょえええええ」の悲鳴をキメた明石さんなど、キャラ全員の素晴らしさは決して原作だけの力ではなかったです。


こんなに誉めてても、おそらく見て好きになった人の八割が「これは広くは流行らない」と思っていたと思うのですが、現代のアニメの裾野が広いからこそ、こういうものが1クール使って作れるのだなあと感心しました。本物の良作でした。


ちなみにコミケでは、「また阿呆なものを手に入れましたね」 「お前のせいで有意義なコミケが台無しになってしまった」という台詞付きのDVD宣伝用描き下ろしポスターが飾られていました。

100816_3

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2010.08.13

「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」最終回

鋼の錬金術師の原作が終わって、アニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」が終わって、これで締まるかと思いきや「劇場版 鋼の錬金術師」の告知だの、ガンガンに外伝掲載だの、全然終わりそうにない感満々で、ファンとしての感想もどこで締めていいか分からないという感じなんですが。

でもアニメの最終回は良かったです。
ハボックをあえてハッピーエンドに持って行ったのも、二つの最終回の片方にだけそういう道が与えられたのはいいなあと思いました(大佐の目も片方だけで良かった気もしなくもないけど)。


鋼の錬金術師は、私が最初に原作を読んだときはもう第一期のアニメが始まっていて、アニメを見たら速攻でヒューズが死んでショックでしたが、それからもう6年。ここまで共に歩んできた物語が、こうやって終わる瞬間を見届けられて、感慨深いです。

ハガレンはメディアミックスの真骨頂で、アニメだのゲームだの映画だの再アニメ化だの再映画化だの、やれるだけのことをやり尽くして、これ以上絞れるところがないくらいまで様々な物を絞り出した作品に、結果的になったように思います。
ものすごいお金も動いたし、恐ろしい数のファンがついたり離れたり振り回されたりしました。たった一つの漫画で有り得ないほどのお祭り騒ぎが繰り広げられました。

それがこの作品にとって幸せだったのかそうでなかったのか、それは分かりませんが。
遂に祭りは終わりました。これでやっと、原作は原作で、アニメ二つもそれぞれのものとして、落ち着くところに落ち着いたのです。


今から後にハガレンを初めて知る人は、もう原作もアニメ二つも全部見る人なんて、あまりいないでしょう。
原作だけ読んで満足するかもしれない。アニメも片方だけ見て、こういう作品かと納得する人も多いと思います。

どれか一つだけでも、鋼の錬金術師は素晴らしい作品になったと思います。

原作は永く少年漫画の大作として語り継がれていくだろうし、エドとアルが大勢の素晴らしい大人達に出会いながら自分たちの道を切り開いていく物語は、きっとこれからも大勢の人の心を打つでしょう。

水島精二監督のアニメ「鋼の錬金術師」は、途中から原作とはまったく別の物語になったけれど、「鋼の錬金術師」という世界を舞台に脚本の會川昇さんが作り手として背骨を一本通した、アニメとして本当に秀逸な作品でした。

「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」は、アニメ前作では扱いきれなかった原作の大半をもう一度忠実に、そしてそれ以上に魅力的に動かした、まさに模範的な原作のアニメ化だったと思います。

商用に堪え得るあらゆる物の材料となるべき原作を築くことを求められた人。たった一つの材料から複数の物を作ることを求められ、「自分ならどうするか、どうするべきか」を問いかけて作品を作り続けた大勢の人達。
その結果、後世に残ることになった作品全てが、本当に素晴らしい。このすべてが紡がれる様をその場で見ることができたことは、とても幸せでした。胸を張って「鋼の錬金術師」のファンだと言うことができます。


そして一緒にハガレンを応援していた人達。ファンサイトは次々に出来ては閉じられ、そのほとんどの人はどうしているかも分かりません。でも今はコミックスすら買っていないような人でも、きっとみんな、何らかの形でこの作品の最終回を見るでしょう。
そうして、昔の日々の様々なことを思い出すのだったらいいなあと思います。その人達と共有していた思い出は、私の宝物でもあります。この作品によって与えられた、この作品が世にある限り、失われない宝物です。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« July 2010 | Main | November 2010 »