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2012.11.19

『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』よ永遠なれ

スペース・ファンタジー『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』。

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英文表記の「LEGEND OF THE GALACTIC HEROS @TAKARAZUKA」で華麗さ倍増!
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ゲーム「逆転裁判」の見事な舞台化が記憶に新しい宝塚が、満を持して、「銀河英雄伝説」の舞台化に名乗りをあげたのであった。銀河の歴史が、また1ページ…(お約束)。
ところで私は銀英伝も好きですがミュージカルも宝塚も好きで、さらに宝塚逆転裁判も好きなので、今回の公演に関しては企画段階から賞賛を惜しまぬ方向であります。
ちなみに昔、OSK版のアップフェルラント物語というのもありましてな・・・それはさておき。


東京宝塚劇場の前の正統ヅカファンの人をかき分けつつ会場に入ると、私のまわりは一般売り出し席だけあって、宝塚初心者の方々の場慣れしない息づかいに満ちておりました。

しかし幕が上がると、「宝塚」という空気に観客を巻き込むべく、華麗さに一点の曇りもない人々が輝かしく現れ、まず…歴史の教科書的説明

そう、銀英伝というのは、銀河に勢力を拡大した人類が宇宙に進出し、銀河連邦を成立させるが独裁者ルドルフの台頭により銀河帝国へと変貌し、そののちに独立した自由惑星同盟と長らく対立関係にあるなかで双方の中心に立つフェザーン自治領が加わり三つの勢力が・・・
ってその説明長いわ!

さらに銀河帝国は現在、ラインハルトという若き英雄を得ており、彼は表向きは自由惑星同盟と戦っているが実際は姉を後宮にとられた憎しみから銀河帝国の打倒を企んでおり、なんやかんやでトータルとしては宇宙を手に入れることを目標としているわけで・・・
解りにくいわ!!

というこの辺の説明を、口上と、歌と、スクリーンの図示により開始10分で観客に叩き込もうとするシナリオ。この状態にさらに自由惑星同盟のヤン・ウェンリーが絡んでくるので、原作を知ってても目まぐるしいことこの上ない。

確かに銀英伝は1400年をまたぐスペースオペラなので、本当はそういうとこはすごく大切。
しかし、幕間の休憩時間に私の前後にいらっしゃった非銀英ファンのヅカファンの方々の感想をまとめてみますと
事例1
「なんだか話は全然わからないわね~」
「後半はもっとスピードアップするから、もっともっとわからなくなるわよ~」
事例2
「あんなスクリーンに相関図まで出してねえ・・・説明ばっかりねえ」
「次は○○さんと来る予定なんだけどねえ」
「○○さんには絶対わからないわねえ」
(しかし、シナリオ以上に重視するものがあるらしいヅカファンの方々からは「解りにくいから失敗作」という空気は微塵も感じられなかったのが印象的でした)



そんな避けがたい難解さを除くと、この舞台化の素晴らしいところは、原作の固定化されたイメージを一度捨てて宝塚らしくなるように要素を選び磨いているところだと思います。例えば自由惑星同盟においては、トリューニヒトが最も格好いい。

特に白眉である点として、オーベルシュタインが美形。頭が切れて謀略が得意、残酷さも厭わないがそれはラインハルトに対する忠義心によるものである・・・と書くと別に原作と変わらないですが、美形

オーベルシュタインが美形だと何が起こるかというと、幼なじみで腹心であるキルヒアイスと、新参者だがラインハルトの心を揺さぶるオーベルシュタインの間で、正三角形に近い三角関係が成立するわけです。

そしてラインハルトが苦しみながら歌い上げる今回の舞台の代表曲「私の中の天使と悪魔」
「天使(キルヒアイス)は私に厳しく、悪魔(オーベルシュタイン)が甘く微笑むのか・・・天使が私を癒し、悪魔が脅し苛むのか・・・」
二股カミングアウトですよ!何この展開!

そもそも銀英伝は男性キャラの園ですけど、原作者の田中芳樹先生がホモ系二次創作は嫌いだと早い時期に明言したこともあり、やおいとかBLとか腐に相当する文化は大きくは育たなかったのです。
それでもあえて言及するなら帝国だとロイ(以下自重)・・・それはともかく、それが今になってコレですよ。しかも二股の勝者がオーベルシュタインですよ。

そこにさらに、原作から正統に引き継ぐ、ラインハルトがややシスコン気味に愛する姉アンネローゼと、親友というには過剰に思い入れのある親友キルヒアイスとの、隠れた相思相愛の為せる三角関係も色濃く描かれる。

これでは主役ラインハルトが両方の三角において辛い立場である上、公式が否定する男×男関係まで出来てしまう!しかし、そこは宝塚。男役トップが演じる主役は必ず華麗な姿で幕を引く。そして彼には必ず、娘役トップと愛を育むという展開が待っている。

というわけで、ストーリーの本筋としてはラインハルトとヒルダに芽生え始める恋が、鮮やかに光を浴びて演じられるのであった。

こんな完璧な人間関係で構成された銀英伝、見たことないよ!



正直・・・同盟いらないよね!
私は実は一途に同盟ファンで、ヤンを人生の師と崇める勢いであり、さらに今回の同盟キャラの描かれ方にもなにひとつ文句はないのですが、このシナリオの主軸からみると、同盟は割愛してもいいのではないか。シナリオ作者の方は、既存のイメージから出ようとする一方で、原作への尊重は切り捨てられなかった感が強く・・・。
同盟だけでなく、筋肉バカのオフレッサーなんて、確かに歴史上は格別に重要だけど、宝塚にはいらないでしょ!

観客は女性なんだから、歴史部分はフワっとさせてれば良いと思うのです。銀河帝国が長年戦っている敵国F?と何だかんだ?やってたらラインハルトが昇進!みたいな感じでいいんですよ。具体的に言うと、原作と舞台の関係が新撰組における史実と創作、くらいの関係でいいんですよ!

見終わって思い返せば、輝く軍服を着たラインハルト率いる軍勢の華やかさ、貴族社会の退廃的な美しさ、ヴェスターラントの民の群舞など、瞼の裏の残像に光の輝きが残るほど美しい舞台でした。これはぜひ、もう一度練り直して再演していただきたいものです。
同盟は・・・同盟も、本当にいいんですけど・・・同盟は華やかじゃないのがいいところ、という原点を宝塚で生かせるかどうかは、再考の余地ありかと。

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